アルヘンタ分類についての私見

最近、頭蓋変形を形状から分類した「アルヘンタ分類」と言うのが知られるようになってきました。※1
位置的斜頭症の頭蓋骨変形は重力と抗重力から生じる「応力」により変形します。
また縫合線を応力がまたぐ際にどうなるかなど様々な要素が絡んで頭の形が決まります。
アルヘンタ分類には構造学的な視点が抜けている部分があるのでこの分類から外れる形状が出てきてしまいます。
そこで、このアルヘンタ分類に対する私見を述べさせて貰いたいと思います。

1) 知っておきたい構造学上の法則

構造学上の法則と言っても “頭蓋変形を考えるにあたり” というのが前提での話しになりますので一般構造学にはないものもありますのでご了承ください。

・応力は縫合線を跨ぐ時はその半分の力は縫合線で分散される
・縫合線に一定以上の応力がかかると縫合線部分でヒンジ状変形をきたす
・縫合線のヒンジ状変形が頭蓋骨のパーツ間の位置関係に影響を与える
・頭蓋内の内圧は応力の集中する場所により多くかかり頭蓋骨に対して変形力を生じる
(頭蓋内の内圧は均等にはかからない、という意味で、一般的に言われている事を否定します)

こういった事により頭蓋変形が形成され、形状が決定されていきます。

2) 斜頭タイプが形成される理由

① 斜頭タイプ1

良く接地する部分(作用点)から応力が生じて頭蓋変形が始まりますがその応力は縫合線を超えていない段階がこのタイプです。
骨そのものの変形も始まっていないので適切な対応があれば自然寛解を期待できます。
斜頭タイプ1を測定するとほぼレベル1の範囲となります。

② 斜頭タイプ2

耳の位置に左右差が生じているが額の変形が見られないタイプです。
実際には耳の位置に変異が起これば額の形状に左右差が生じている事が殆どです。
しいて説明するならば応力が縫合線を1つ超えた程度の状態で、前方に向かう応力が冠状縫合で分散された結果、前頭骨に変異を生じさせなかったとなります。
耳の位置の左右差が一定以上あればヘルメット治療を考える事になりますが、純粋にタイプ2で済んでいるなら斜頭度としてのレベル3には至らない程度なので自然寛解の可能性はあります。
ただしレベル1まで良くなる事は非常に稀です。

③ 斜頭タイプ3

耳の位置だけでなく額の形状にも左右差が見られるタイプで縫合線を2つ超えた状態と考えられます。 このタイプの頭蓋骨をCTで見てみると冠状縫合が斜めに走る像を確認する事ができます。 ただ、多くの場合、このタイプなら骨そのものは変形が生じていないので早期治療ができればレベル1までの改善を期待できます。 ポジショニングなどを行っても成長と共に改善する可能性は低いので、医療現場では「大きくなったら良くなるよ」と言われる事は少なくなります。

④ 斜頭タイプ4

応力が3つ目の縫合線に影響を与えているほどの変形を生じているタイプです。
イラストで言うなら左側の冠状縫合部分でヒンジ状変形を生じ、後頭部が全体的に左側に変異しています。
CT上でも左右の頭蓋容積に大きな差を生じさせてしまい、脳の発達に影響を与え始めます。
斜頭レベルは3後半以上で多くの場合は4以上を示します。
ここまで来ると論文上でも自然に良くなる例を示す事はほぼありません。

⑤ 斜頭タイプ5

応力が3つ目の縫合線を超えて頭蓋骨の変形を引き起こしているタイプです。
前頭骨が前方に変異し、こめかみ部が横に膨らみ、また後頭部が後上方変異を引き起こしています。
ただし、日本人ではこめかみ部が膨隆する変形は短頭の際に起きる事が多いようです。
斜頭症でここまでの変形が起きていると斜頭レベルは5に至っている事が多いようです。

3) 短頭タイプが形成される理由

① 短頭タイプ1

短頭タイプの作用点(良く接地する点)は後頭骨にあり、そこから応力が分散されます。
このタイプは枕の高さで応力が分散される方向が決まりますがタイプ1は仰向けで良く寝ていれば枕の高さはさほど影響を与えません。
応力はラムダ縫合で分散されるので側頭骨や頭頂骨への変異は見られませんが、稀に小泉門に凹みを生じてしまい部分絶壁を引き起こす事があります。
短頭レベルは1で適切な指導を受ければ自然寛解も期待できますが、小泉門に凹みが起きている場合はその凹みは残ってしまいます。

② 短頭タイプ2

応力がラムダ縫合を超えて左右の冠状縫合部分に至りますがそこで応力は分散されるのでヒンジ状変形は見られませんがハチ部分が横方面に広がりを見せます。
短頭レベルも多くはレベル2もしくは2と3の境界くらいの変形に留まり、適切な指導を受ければ自然寛解も多少は期待できますが短頭レベルが3に至っている場合は自然寛解はまず期待できません。
多くの場合で小泉門に凹みが見られますが後頭部に後上方偏位は見られません。

③ 短頭タイプ3(おむすび型/アンコ型) ※2

応力により左右の冠状縫合部でヒンジ状変形が起き、ハチ部分が横に大きく広がり、また、こめかみ部分が引っ込む感じの変形が見られます。この状態だとおむすび型になります。
これがさらに進むとヒンジ状変形部分で側方に広がりこめかみ部分に膨隆が認められる様になります。これがアンコ型。それなのでアルヘンタ短頭分類タイプ3は非常に広い形状を内包していると言えます。

短頭レベルとしてはレベル3後半〜レベル5となります。
またこのタイプはアゴを出す感じで仰向けで寝ている事が多く、後頭部に後上方偏位が見られます。
後頭部に絶壁状態が起きている事が多く、これにより「短頭症=絶壁頭」と言う認識を多くの方に与える事になりました。
アルヘンタ斜頭分類では斜頭タイプ5でこのこめかみ部の膨隆が起こるとされていますが日本人は短頭タイプ3で起こる事が殆どです。

④ 短頭タイプ4(烏帽子型) ※2

短頭タイプ3はアゴを出す感じに寝かされている事で起こる変形ですが、タイプ4はマクラが少し高めでアゴを引く感じに仰向けで寝かされていると起きる変形です。
それなのでハチの張りはそこまで強くなく、後頭部の後上方変異が大きく、冠状縫合部分でヒンジ状偏位が起きています。
ヒンジ状変形が大きいほど後頭部は後上方偏位がそれだけ大きくなりますが、それに反比例して前頭骨の前方偏位は小さくなります。

専門医の中にはこれを「長頭症」の一種として捉えている方がおりますが、長頭症は頭の前後径と横径の比率で前後径が大きくなる形状ですから、このタイプ4は「短頭症」になります。
タイプ3以上に絶壁感が強く見られます。
短頭度はレベル4程度になる事が多いようです。
欧米人にもこのタイプは見られますが何故だかアルヘンタ短頭分類には示されていなかったのでタイプ4としてここに加えさせて頂きました。

※1この記事は下記論文を取り上げて私見を述べさせて頂いております。またイラストは論文中のイラストを加筆修正して使用しております。
Argenta L, David L, Thompson J. Clinical classification of positional plagiocephaly. J Craniofac Surg. 2004 May;15(3):368-72.
link : https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15111792/

※2 おにぎり型変形、あんこ型変形及び烏帽子型変形は「べびきゅあ」が命名したものです。

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