斜頭症等に関する論文集(東京 池袋)

意外と知られていない斜頭症の真実

斜頭症などに関係する論文を紹介致します。 全て英語論文ですから、特に大切と思われる箇所を翻訳しているのが『 』内の文章になります。 斜頭症に関する論文は毎月多数出されておりますので可能な限りそれらを読む様にしています。 「べびきゅあ」ではそれの内容を踏まえてお越しくださる方々に説明を行なっております。 ここではヘルメット治療以外についてまとめてみました。

① 日本に於ける斜頭症の実態

日本では1999年10月以降、斜頭症が急増しました。これはアメリカが先行して行なった「仰向け寝キャンペーン」によるものです。成長とともに斜頭症の発生率は減少していますが、実際の形状はほぼ改善していません。これは詳細は省きますが形状は同じでも頭囲の成長により計算上、斜頭症が改善する様になっているからです。ですから「べびきゅあ」では数値化も大切ですが写真などによる見た目の変化を大切にしています。
尚、日本人は短頭(絶壁)が多いと言われていますが、この論文にもある様に平均値は85.2。世界標準では92を超えると短頭とされていますので実際はそれ程でもないというのが実際なのでしょう。

『(要旨)0歳から15歳までの変形性後斜頭症の有病率は46.7%で、頭部指数(CI値)の平均は85.2でした。 変形性後斜頭症の有病率は年齢層とともに減少し、2歳までのグループは57.4%、未就学児のグループだと47.2%で、小・中学生のグループになると41.5%になります。日本における変形性後斜頭症の発生率は諸外国で報告されているものより高かった。』1)

② 40年以上前の日本は斜頭症予防の先進国でした

世界的に見て、斜頭症予防という観点からの研究は正直遅れていると言わざるを得ません。実際に然程予防される事なく毎年多くの斜頭症児が発生しています。ですが40年以上も昔、日本では斜頭症予防の先進国で、どうすれば予防できるか多くの論文が書かれていました。そのうちの一つを紹介します。
(この方法は斜頭症などの頭蓋変形の予防に非常に有効な手段ですが、2024年現在、厚生労働省の推奨方法ではありません)

『頭蓋骨の変形を防ぐために、新生児は最初の4か月間は側臥位で寝かせる必要があります。その後、うつ伏せの姿勢を保つ必要があります。』2)

③ 斜頭症の赤ちゃんの多くが身体的問題を抱えています。

「べびきゅあ」では来院くださる赤ちゃんの全数に発育チェックを行います。それというのも、結構な割合で頭の形が歪な赤ちゃんは何かしらの問題が見つかるからです。
「べびきゅあ」に来院されて何かしらの症状が疑わしい場合はご両親にその説明を行い医療機関の受診を勧めており、受診の結果およそ71%が治療が必要と診断され、問題ないと言われたケースのおよそ6割がその後やはり治療が必要だったと言われています。
また頭蓋骨癒合症は1年に3〜5件ほど見つかり病院に紹介を行なっています。これ程多くの症状が見出されるのですから斜頭症を施術する者は適切な医療に繋げる技量及び知識が必要になります。
(べびきゅあは治療院であり病院ではありません。当然、医師の様に診断行為はできませんのでご理解ください)

『(要旨)頭蓋変形外来を定期的に通院する赤ちゃんのうち、2%で頭蓋骨癒合症が疑われ、36%に発達遅延が見られ、58%には首の機能制限の病歴があった。』3)

③ 徒手療法は斜頭症の赤ちゃんに対して最高の結果をもたらす

日本では手による施術を軽視する傾向が強いですが、欧米では日本とは逆に頭蓋変形の改善度の上昇効果が得られることから徒手療法(ここで言う徒手療法はマッサージ術のこと)の重要性が説かれています。また、ご両親や介護者に対する説明や教育に対する比重も日本より重い傾向があります。

『標準治療に徒手療法を追加すると、重度の非癒合性斜頭症の乳児の治療期間が短縮されます。』4)

『非癒合性非対称性(頭蓋)については、小児理学療法プログラムを第一選択の介入を念頭に入れる必要があります。理学療法の中でも徒手療法は、特に親や介護者へのカウンセリングと組み合わせた場合に最高の結果をもたらすことが示されており、さらに大きな効果をもたらす可能性があります。』5)

④ 徒手療法全てに質の高い証拠がある訳ではありません。

例えば、オステオパシーと呼ばれる手技療法があります。アメリカでは長い歴史を持ちますが、残念ながら小児に対するオステオパシーの有効性に対する調査は斜頭症も含めて施術効果を担保するような質の高い証拠はないのが現状です。
しかし「マッサージ施術」に関しては世界的に変形に対する矯正作用が認められており、日本においては保険施術の適応にもなっております(現在、斜頭症等の頭蓋変形は保険施術ができません)。
この矯正作用が認められているので斜頭症矯正を行う際にはマッサージ師の国家資格取得が必須となります(柔道整復師、助産師などが斜頭症矯正を手掛けるとマッサージ師法違反となります)。

『オステオパシー手技療法の有効性について中程度の証拠が得られましたが、どの状態についても質の高い証拠はありませんでした。』6)

『マッサージによって得られる効果
矯正作用 : マッサージ施術により加えられた力により、身体の形態的および機能的な異常を正常な状態に戻そうとするもの』7)

⑤ 斜頭症と不正咬合について

上下の歯が正しく噛み合っていない状態を不正咬合と言います、斜頭症になると不正咬合になりやすいだけでなく、治療成果が上がりにくい、治療期間が長くなるといった原因にもなると考えられます。
斜頭症になると下顎骨の成長に左右差が生じて不正咬合を引き起こすので、下顎骨が成長する前に斜頭症を改善しておいた方が良いと考えられます。

『斜頭症を治療しないと、不正咬合の治療結果に重大な制限が生じる可能性があります。』8)

『癒合を伴わない斜頭症の場合、影響を受けた下顎骨の体積が 3.8% 増加し、下顎枝の高さは 3.5% 短く、及び下顎の体長が 3% 長くなります。また鉤状突起は患側で 2.3% 前方に傾いていた。』9)

⑥ 変形性後斜頭症の赤ちゃんは眼周囲の症状を高確率で呈しやすい

斜頭症は頭だけに変形を起こすのではありません。「斜頭症性顔貌」(頭蓋変形に起因する特徴的な顔つき)を引き起こすのですが、その特徴の一つが目に表れます。
論文によると偽眼瞼下垂は93.7%、偽眉下垂症は59.4%で確認されています。

『変形性後斜頭症の乳児は、斜頭側とは反対側に仮性眼瞼下垂および仮性眉間眼瞼下垂を呈することがあります。(論文では93.7%の発生率)』10)

⑦ 斜頭症は子供の運動機能を低下させる

斜頭症の赤ちゃんは36%で発達遅延が見られる論文を先に紹介しましたが、これが持続的である事が示された論文です。
いろんな症状を呈する様ですが「べびきゅあ」に来られた斜頭症の小学生に良く見られる「運動機能」の低下として考えられるものとして
・つまずいて転びやすい
・走るのが遅い
の2点の訴えが特に目につきます。

『乳児期に中等度から重度の変形性斜頭症を患っていた児童は、運動機能に持続的な低下が見られます。』11)

⑧ 斜頭症の相談は専門医にすべきです

斜頭症という言葉が定着しつつある2024年現在も、折角医師に相談したにもかかわらず、重度の斜頭症の赤ちゃんを持つ親御さんに対して「それ程酷い様には思えなから様子見で良い」「大きくなったら目立たなくなるから気にしなくて良い」「斜頭症は審美的な問題しかないから」などと言って、適切な治療を受ける機会を失わせてしまったケースが多く見られます。
斜頭症の相談は、保健師や小児科医ではなく斜頭症の専門家に相談すべきと論じられています。

『立ち位置の違いにより頭蓋変形の重症度を異なるスケールで認識していることを示しています。(斜頭症専門家でない)小児科医は頭蓋非対称性を軽く見積もる認識は、親が乳児に治療的介入を求める可能性を低下させる可能性があります。』12)

これからもべびきゅあでは思い込みや持論ではなく根拠を基に説明を行なっていきたいと考えております。

1) Neurologia medico-chirurgica. DOI: 10.2176/jns-nmc.2023-0216
2) Orthopedics & Traumatorogy. 1980 Volume 29 Issue 2 Pages 197-201
3) Acta Paediatr. 2009 Sep;98(9):1494-9.
4) Child's Nervous System. Volume 32, pages 2211–2217, (2016)
5) Children 2023, 10(7), 1184
6) Journal of Bodywork and Movement Therapies. Volume 31, July 2022, Pages 113-133
7) 基礎保健理療Ⅱ(保健理療理論); 日本理療科教員連盟教科書委員会 2014
8) Extrica , Vol. 4, No. 2, –5, Feb. 2024
9) The Cleft Palate Craniofacial Journal. Volume 33 Issue 5, September 1996
10) Journal of Binocular Vision and Ocular Motility, 69(1), 18–23.
11) Pediatric Physical Therapy 32(2):p 107-112, April 2020.
12) Clin Oral Investig. 2021 Feb;25(2):525-537.

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