斜頭症について

ここでは斜頭症について書かせて頂きます。
斜頭症などに関しての基礎知識をこちらで得ていただければと思います。

斜頭症の発生率について

斜頭症とは

斜頭症とは頭蓋骨の左右対称性が崩れた状態で安定している事で、通常、生後1年以内に発症するものとされています。
特に、縫合の早期癒合症を伴わない変形性斜頭症(DP)においては
「本質的に正常な頭蓋骨に対する外力によって生成される頭蓋骨の背面の片側で頭蓋が平らになることであり、扁平率が対称である場合、その変形は変形短頭(DB)と呼ばれる。」(1 と定義されています。

頭蓋骨の変形は大きく短頭症、長頭症及び斜頭症に分類されます。
国際的には頭蓋骨の前後径を100とした場合、横径は80~85を正常の基準としていますが、日本人の頭蓋骨は前後径を100とした場合、79未満を長頭症、94を超えるものを短頭症として定義されています。(2
一般に頭蓋骨の短頭症と長頭症は同時に起こる事がなく、また、短頭症と斜頭症が同時に起こる事は多いが、日本における複数の論文では長頭症と斜頭症を合併する事例は非常に稀です。

1. JMAJ,2021;4(1):50-60
2. J CraniofacSurg,2010; 21(5):1434-7

日本の統計では75%です。

斜頭症の発生率は論文によって大きく異なります。
アメリカでは乳幼児突然死症候群を減らすために1992年仰向け寝を推奨し1994年から「Back to Sleep」キャンペーンを展開しました。
これにより変形性斜頭症の発生率は0.3%と推定されていたものがキャンペーン後、48%にまで増加しました。(3
日本ではどうなっているのでしょうか。
日本は元来、長頭の民族でした。 実際に国内で出土する頭蓋骨やミイラを分析すると短頭が見つからない事からも証明されています。
こういった状況は戦中まで続き、それ以降、短頭(絶壁)頭が増加することになります。
「斜位乳児のハンドリングの指導について」(4 によれば「頭部変形のない者25%、右後頭部が扁平になった右斜頭は45%、後頭部全体が扁平な扁平頭蓋5%、左側が扁平な左斜頭は25%の割合」となっており長頭症の赤ちゃんは報告されていません。
ただ、これはどの程度の変形度をカウントしているかについて明言がなく、1980年当時よりも現時点の方が斜頭症の患者が多いのですが現在の報告では5割程度という報告が多いことから、レベル1~2弱の赤ちゃんもカウントしている可能性が示唆されます。

「べびきゅあ」では、某保健所と協力し6か月健診時のレベル2以上の頭蓋骨変形を調査しています。
この調査は先天性疾患を有していない、いわゆる健常児を対象としたものです。
結果として斜頭症発生率は全体の48%であり、右斜頭と左斜頭の割合は7:3、純粋短頭症の割合は6%で34%が斜頭と短頭の複合でやはり長頭症は見出されておりません。
性別では男児に多く、およそ2:1となっています。
第1子の斜頭症割合は高いとされていますが、第1子が斜頭症だと第2子に斜頭症率は優位に高く、また、第1子に斜頭症がなくても年齢差が小さいと第2子の斜頭症率は優位に高くなります。

男児に多い理由は女児より男児の方が頭囲が大きい(重い)事で斜頭が重度化しやすいと考えられています。
また妊娠初期における母体のアンドロゲン濃度が斜頭症のレベルに影響を与える事を「べびきゅあ」で公表し、現在、検証中となっています。
また、第1子はお母さんの子宮の固さが関係すると言われますが、実際は、生まれた時点での頭蓋骨変形の出現率は最大7%で、大半が後天性のもの。
ですから、お母さんの子宮の固さは原因として然程大きくないと予想されます。
特に赤ちゃんを良く寝かせるほど斜頭症が発生することから、第2子に斜頭症が増えるのは育児上で寝かせる時間が第1子よりも長くなる傾向があるからでははないかと考えられています。

3. J CraniofacSurg,2011;22 (1):6-8
4. 整形外科と災害外科 1980年 29巻 2号 :197-201

斜頭症の分類

斜頭症の分類は下記のようになっております。

① 分類

頭蓋骨の変形により以下のように分類します。
1) 長頭症
2) 短頭症(絶壁頭)
3) 斜頭症

変形の時期により
1) 先天性頭蓋骨変形
2) 後天性頭蓋骨変形

② 先天性頭蓋骨変形の分類

原因は大別すると次にようになります。
1) 遺伝疾患
2) 頭蓋骨縫合早期融合症
3) 子宮内の胎児の状況
4) 出産に起因するもの

1) 遺伝疾患
アペルト(アペール)症候群
クルーゾン症候群
ファイファー症候群

2) 頭蓋骨縫合早期癒合症
前頭縫合早期癒合……三角頭蓋
冠状縫合早期癒合……短頭蓋
矢状縫合早期癒合……舟状頭蓋骨
この他、一側冠状縫合早期融合や一側人字縫合早期癒合
これらが単独、もしくは複合して起こるとクローバー状頭蓋などが起こります

3) 子宮内の胎児の状況
多胎妊娠
初産
子宮筋腫
羊水過多症
羊水減少症

4) 出産に起因するもの
低体重児(2500グラム未満は頭蓋変形のリスク)
巨大児(3200グラム以上は頭蓋変形のリスク)
鉗子分娩や吸引分娩
逆子出産
難産
仮死産
NICUの使用

このうち1)と2)は医学的な治療を必要とします。
頭蓋骨縫合早期融合症は以前は2500人に1人の発生率とされていましたが、今は1000人に1人というレポートもあります。

こに頭蓋骨縫合早期融合症は出産時に分からない事も多く、「べびきゅあ」に来られる患者さんの中にも年間3~5人ほど、この症状の方を見つけて医療機関に紹介しています。
3)と4)、特に4)は良く見られるもので、適切な産後のケアとサポートにより改善可能です。
ですが、近年は上手くケアがなされずに、そのままの形状で成長してしまう事が増加してきました。

※原因と予測因子の違いについて
原因とは………「危険因子」とも言います。斜頭症を形成する因子
予測因子とは…治療の予後を形成するもの
2020年に発表された論文によりますと(5、
・初産
・多胎妊娠
・未熟児
・巨大児 など
はあまり関係がないという報告がありました。
ただ、その他の報告では引き続きこれらは危険因子となりうる事を肯定していますのでこちらのページでは引き続き掲載を続けたいと思います。

5. Front.Pediart.,11 November 2020

③ 後天性頭蓋骨変形

原因は大別すると次にようになります。
1) 仰向け寝育児
2) 固すぎるベビーマット
3) 寝かせっ放し育児
4) 斜頸の存在
5) NICUなどによる医療

乳幼児突然死症候群を予防するために1992年、アメリカで仰向け寝育児の推奨がなされました。日本でも遅れて2000年より仰向け寝育児が推奨されましたが、これが後天性頭蓋骨変形(変形性斜頭症)の原因であると、ここ数年、多くの国の医師たちによる論文により指摘しています。
また、同じ時期にベビーマットが不必要に固くなり、それが斜頭症をそれこそ爆発的に増やす原因になりました。

そして、泣かない赤ちゃんほど斜頭症になります。
これは泣かないと寝かせっ放しにされる事が多く、これが斜頭症を誘発するからです。
これらにより、変形性斜頭症は育児性斜頭症という人もおり、実際にアメリカでは斜頭症は「母親の育児法に問題がある」とされています。
ですが、仰向け寝や固すぎるベビーマットはこれは国の方針ですから、それに対する対処法を知らないお母さんにその責任を負わせるのは酷というものです。
「べびきゅあ」でも斜頭症の予防講座を開いていますので、妊娠中からこう言った情報を仕入れておくのも良いと思います。

NICUなどに関しては、一概に言えない部分もあります。
ただ言えることは、赤ちゃんに余程の命の危機がないのであれば、赤ちゃんを寝かせっ放しにはせずに頭が変形しないように配慮して欲しいと願います。

図柄は下記より引用
“Misshapen Heads in Babies: Position or Pathology?”
Ochsner Journal October 2001, 3(4)191-199;

④ 斜頭症の重症度の分類

斜頭症の重症度の分類は日本にいては3種類使われています。
このうち2つはCA(Cranial Asymmetry)と呼ばれる指標とCVAI(Cranial Vault Asymmetry Index(%))と呼ばれる指標を用い、もう1つは左右対称率を使用する分類です。
更にCVAIを用いる分類は「正常、軽症、中等症、重症、最重症」と分類する方法と「レベル1~レベル5」と分類する方法に分けられます。
左右対称率を用いる分類は「軽度、中等度、重度、超重度」に分けられ、この内ヘルメット療法の適応は中等症、レベル3もしくは中等度以上とされています。

◯レベルを使うランク分けを用いる場合
レベル1:CVAIが3.5未満
レベル2:CVAIが3.5~6.24
レベル3:CVAIが6.25~8.74
レベル4:CVAIが8.75~10.9
レベル5:CVAIが11以上
これに「同側の耳の位置の移動」「同側の額の突出」「反対側の顔面の平坦化」と言った指標を加え判断します。

◯「症」を使うランク分けを用いる場合
正常:CVAIが5未満、CAが6未満
軽症:CVAIが5以上7未満、CAが6以上9未満
中等症:CVAIが7以上10未満、CAが9以上13未満
重症:CVAIが10以上14未満、CAが13以上17未満
最重症:CVAIが14以上、CAが17以上
例えばCVAIが10でCAが12の場合は上のランクが該当しますので「重症」になります。

〇「度」を使うランク分けを用いる場合
軽度(クラスⅠ):90%以上
中程度(クラスⅡ):85~90%
重度(クラスⅢ):80~85%
超重度(クラスⅣ):80%以下

CA : Cranial Asymmetry(mm) = 対角線 B-対角線 A(B>A)
CVAI : Cranial Vault Asymmetry Index(%) = (対角線 B-対角線 A)/ 対角線 A × 100 (B>A)

ヘルメット療法の適応はレベル3、中等症もしくは中程度以上となっているのですが、例えばCVAIが6.5ですと片やレベル3でヘルメット療法の適応となるのですが、一方「症」を用いると軽症となりヘルメット療法の適応外と判断されます。
実際、CVAIが6.5と言うのは両親の多くが頭の形を気にされる変形度なのですが、これを適応外とされるのに違和感を覚えるのは私だけではないと思います。
また左右対称率を使用した場合はおよそ93%でレベル2に相当し87%でレベル3相当となりますので早めにヘルメット療法の適応と診断される事になります。
個人的には斜頭度がレベル2であっても「同側の耳の位置の移動」「同側の額の突出」「反対側の顔面の平坦化」のどれか1つに「斜頸」「反対咬合」のどれか1つが見られればヘルメット療法の適応だと考えています。
そう考えると左右対称率で判断した方が現実に近いと思われますが、個人的には将来的に3DAIというインデックスに移行していくのではないかと考えています。

⑤ 短頭症の重症度の分類

短頭症の分類は頭型指数(CI:幅を長さで割った値×100)を用いたものと短頭(頭蓋)率(CR:長さを幅で割った値)の2種類を用いたレベル分けが存在します。

〇頭型指数を用いた場合
国際的にはCI≧90%を短頭と定義されていますが短頭症は民族性が大きく、成育医療センターでは79未満を長頭症、94以上を短頭症としています(JMAJ,2021;4(1):50-60)。
レベル分けは複数存在しますがおよそ次のようになっています。
レベル1:CIが80~89
レベル2:CIが90~97
レベル3:CIが98~103
レベル4:CIが104~109
レベル5:CIが110~

〇短頭率を用いた場合
短頭率は日本ではアイメットを提供する医療機関で使用されています。頭型指数とは反対に数値が小さくなるにつれて重度になります。
軽度:1.0~1.2
中程度:0.9~1.0
重度:0.8~0.9
最重度:0.8以下
ヘルメット療法の適応はレベル3以上もしくは中程度以上となっています。

⑥ 交通事故など外傷による斜頭症

斜頭症は成長後の外傷によっても引き起こされるケースがあります。
代表的な外傷を列記してみたいと思います。

〇代表的な外傷を原因とする斜頭症
交通事故
サッカーのヘディング
野球の頭部デットボール
転落事故 など
※スポーツは必ずしも斜頭症が発生するというものではありません

〇乳児は特に外傷が原因になることが少なくない
ベッドからの転落
つかまり立ち期の転倒による頭部打撲
ベビーカーからの転落
頭部打撲 など

※頭部に強い力を受けると撓んで衝撃を分散させようとします。 通常は元に戻ろうとしますが一定以上の衝撃の場合、変形が残る場合があります。
原則乳児期は頭部に強い力がかかると変形の原因になることが少なくありません。

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